マンション投資のシミュレーションで「利回り計算は合っているのに、実際のキャッシュフローが想定を大きく下回る」という事態に陥る投資家は少なくありません。AFP・宅地建物取引士として国内外の物件を比較してきた私・Christopherが、5物件の実数値をもとにシミュレーションで絶対に外せない7項目を2026年版として徹底解説します。
マンション投資シミュレーションで確認すべき7項目の全体像
表面利回りだけを信じると収支計算が崩壊する理由
不動産ポータルサイトに掲載されている利回りの多くは、表面利回り(年間家賃収入÷物件価格×100)です。この数字はシンプルで比較しやすいのですが、実際の収支計算に使うには致命的な欠点があります。管理費・修繕積立金・固定資産税・ローン返済などのコストが一切含まれていないからです。
私が実際に比較した5物件のうち、表面利回り7.2%を掲げていた東京都内のワンルームマンションは、実質利回りを計算し直すと4.1%まで落ちました。差異の主因は管理費・修繕積立金の合計が月1万8,000円と高水準だったことと、築年数が経過していたため修繕費の追加計上が必要だったことです。
シミュレーションに組み込むべき7項目は、①家賃下落率、②空室率、③管理費・管理委託費、④修繕積立金・修繕費、⑤固定資産税・都市計画税、⑥ローン金利変動、⑦売却時の諸費用です。この7項目を漏れなく入力して初めて、現実に近いキャッシュフロー予測ができます。
実質利回りとNOI利回りの使い分けを知っておく
実質利回りは「(年間家賃収入-年間諸経費)÷物件価格×100」で計算します。さらに精度を上げるなら、NOI(Net Operating Income)利回りが有効です。NOI利回りはローン返済前の純収益を物件価格で割った指標で、物件そのものの収益力を評価するのに適しています。
私がフィリピンとハワイの実物不動産を保有している経験からも感じますが、海外物件の投資家はNOI利回りを基準にする文化が定着しています。国内マンション投資でも、この視点を持つと物件比較の精度が格段に上がります。特に複数物件を横断的に比較する際には、NOI利回りで並べると優劣が見えやすくなります。
なお、ローン利息の取り扱いや税務上の経費算入については、必ず税理士または所轄税務署に確認してください。個別の事情によって処理方法が異なります。
家賃下落率と空室率——私が5物件で見た現実の数字
築年数別の家賃下落率:私が実際に確認したデータ
宅地建物取引士として物件調査を行う際、私は必ず過去の家賃履歴と周辺相場の推移を確認します。その経験から言うと、家賃下落率は立地と築年数によって大きく差が出ます。
私が比較した5物件で確認した家賃下落率の実態は以下のとおりです。都心3区(港区・千代田区・中央区)の築10年以内物件は年間下落率0.5〜1.0%程度。城南・城西エリアの築15〜20年物件は年間1.5〜2.5%程度。郊外・築25年超の物件では年間2.5〜4.0%に達するケースがありました。
シミュレーションツールの初期設定が「年間1%」に固定されているものがありますが、郊外物件や築古物件に同じ数字を当てはめると、20年後のキャッシュフローが楽観的に過ぎる予測になります。物件の立地・築年数・周辺賃貸需要を踏まえて、家賃下落率は個別に設定するべきです。
空室率の現実的な設定方法と私が使う補正ロジック
空室率の設定は、シミュレーションの中でも特にブレが生じやすい項目です。営業担当者から「この物件は空室率3%以下です」と説明を受けることがありますが、これは過去の好況期のデータだったり、管理会社が管理している物件全体の平均だったりすることがあります。
私が5物件を検証した際、現実的な空室率として設定した数値は、都心駅徒歩5分以内の単身向けで年間空室率5〜8%(=約18〜29日/年)、郊外や駅徒歩10分超の物件では10〜15%を基準にしました。入退去の際の1〜2ヶ月分の空室期間を年率に換算すると、この水準になります。
さらに私が追加している補正として「入退去時リフォーム費用の積立」があります。ワンルームの場合、退去ごとにクロス張り替え・クリーニングで5〜15万円程度かかるのが実態です。これをシミュレーションに組み込まずに収支計算すると、年間キャッシュフローが数万円単位でずれてきます。
修繕費・管理費の盲点——築年数とともに膨らむコスト構造
修繕積立金の値上がりリスクをシミュレーションに反映する
区分マンション投資で見落とされがちなコストが、修繕積立金の値上がりです。多くのマンションは新築・築浅時に修繕積立金を低く設定し、大規模修繕が近づく築15〜20年前後に値上げを実施します。国土交通省のガイドラインでは、長期修繕計画に基づいた適正な積立額を確保するよう求めていますが、実態は不足しているケースが多く見られます。
私が検証した5物件のうち、築18年の物件では修繕積立金が購入当初の月5,000円から月1万2,000円に値上がりしており、この差額7,000円が年間8.4万円の経費増に直結していました。20年間の収支計算でこの値上がりを織り込んでいなかった場合、累計168万円のキャッシュフロー悪化を見逃すことになります。
シミュレーション時には、管理組合の長期修繕計画書を必ず取得し、修繕積立金の将来値上がり予定を確認することを強くお勧めします。売主または管理会社に開示を求める権利は、買主候補の段階でも行使できます。
管理委託費と自主管理のコスト比較で見えてくるもの
賃貸管理を管理会社に委託する場合、委託費は家賃の5〜10%が一般的な水準です。都内の場合、月額家賃8万円のワンルームであれば月額4,000〜8,000円が管理委託費として毎月かかります。年間では4.8〜9.6万円の固定コストです。
「自主管理にすれば費用を抑えられる」という考え方もありますが、入居者対応・クレーム処理・退去立会い・次の入居者募集の手間を考えると、本業や他の業務を持つオーナーにとって自主管理のリスクは小さくありません。私自身、東京都内で法人を経営しながらインバウンド民泊事業も運営しているため、管理委託費は「時間を買うコスト」として収支計算に必ず計上しています。
この判断は個人の状況によって異なります。自主管理と管理委託のどちらが合理的かは、オーナーの時間的・地理的条件を踏まえて検討してください。湾岸タワーマンション投資リスク7選|宅建士が現場で見た実態2026
失敗事例から学ぶシミュレーション補正——キャッシュフローを狂わせる4つの落とし穴
金利上昇リスクをゼロとして計算した事例の末路
私が宅建士として物件調査に関わった案件で、変動金利1.2%で35年ローンを組んだオーナーのシミュレーションを後から確認する機会がありました。そのシミュレーションには、金利が一切変動しない前提で月次キャッシュフローが計算されていました。
2024年から2025年にかけて日本銀行が利上げを実施した局面を踏まえると、変動金利前提のシミュレーションに金利上昇シナリオを入れないのは危険です。例えば、借入3,000万円・35年・変動1.2%の場合、月返済額は約89,000円です。これが金利2.5%に上昇すると月返済額は約107,000円になり、月1.8万円・年21.6万円のキャッシュフロー悪化を招きます。
私がシミュレーションを組む際は、現行金利に加えて「+1.0%」「+2.0%」の2パターンを必ず並べて計算します。この3シナリオ比較を行うことで、金利上昇局面でも耐えられる物件かどうかの判断精度が上がります。
売却時コストを収支計算に入れていないパターン
出口戦略としての売却シミュレーションを最初から計画に組み込んでいない投資家は多くいます。しかし10〜15年後に売却する場合、譲渡所得税・仲介手数料・繰上返済時の違約金など、売却時コストは物件価格の5〜8%程度に達することがあります。
例えば2,500万円で売却できた場合でも、仲介手数料(約81万円)・登記費用(数万円)・譲渡所得税(保有5年超で約20.315%)を考慮すると、手取りは想定より大幅に下がります。譲渡所得の計算方法や税率の適用については、売却前に必ず税理士に相談することを強くお勧めします。個別の事情によって最終的な税負担は大きく異なります。
収支計算は「購入から売却まで」をトータルで捉えてこそ意味があります。保有期間中のキャッシュフロー合計だけでなく、売却時の手取り額を含めた総合利回りで判断するべきです。投資物件の見極め方7視点|宅建士が5物件で検証した実数値2026
まとめ:シミュレーション精度を高めて投資判断の確度を上げる
7項目チェックリストと各項目の設定目安
- ①家賃下落率:都心築浅で年0.5〜1.0%、郊外・築古は年2.5〜4.0%を目安に設定する
- ②空室率:都心駅近で年5〜8%、郊外・駅遠で10〜15%を現実的な数値として使う
- ③管理委託費:家賃の5〜10%を毎月計上。自主管理の時間的コストも忘れずに考慮する
- ④修繕積立金の値上がり:長期修繕計画書を取得し、将来の値上げ予定を必ずシミュレーションに反映する
- ⑤退去時リフォーム費用:1退去ごとに5〜15万円を積立額として収支計算に組み込む
- ⑥金利上昇シナリオ:現行金利に加えて+1.0%・+2.0%の2パターンで必ず試算する
- ⑦売却時コスト:仲介手数料・譲渡所得税を含めたトータル収益で最終判断を行う。税務上の取り扱いは税理士へ確認する
AFP・宅建士として伝えたい最後のメッセージ
私・Christopherは、AFP(日本FP協会認定)と宅地建物取引士の両資格を持ち、東京都内で法人を経営しながら、フィリピン・ハワイでも実物不動産を保有しています。国内外の物件を比較してきた経験から言うと、シミュレーションの精度が投資の成否を分ける場面を何度も目の当たりにしてきました。
表面利回りだけで判断した物件が、実質的には月々マイナスのキャッシュフローを生み続けていた事例は珍しくありません。逆に、7項目を丁寧に検証した上で購入を決断した物件は、想定の範囲内で運用が続いています。シミュレーションは「将来の不確実性を管理するツール」です。楽観的な数字を並べるためではなく、リスクを定量化するために使ってください。
なお、税務上の処理・経費算入の可否・売却時の税負担については、この記事の内容はあくまで一般的な情報提供であり、個別の税務判断は税理士または所轄税務署にご確認ください。投資判断は最終的にご自身の責任で行ってください。
より詳細なシミュレーションツールや物件情報が気になる方は、下記リンクから詳細を確認してみてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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