結論から言うと、都心マンション投資の利回りは「表面4〜5%」で語られていても、実質では2〜3%台に収束するケースが大半です。私はAFP・宅地建物取引士として国内外の物件を比較してきた立場から、東京都心エリアの区分マンション5物件を3年かけて精査しました。この記事では、表面利回りと実質利回りの差がどこで生じるのか、都心特有のリスクと出口戦略の判断軸を数字で解説します。
都心マンション投資の利回り基礎数値を整理する
表面利回りと実質利回りの定義から確認する
表面利回りとは、年間家賃収入を物件購入価格で割った数値です。たとえば2,500万円のワンルームが月額9万円で貸せれば、年間108万円÷2,500万円=4.32%になります。計算式がシンプルなので、不動産ポータルサイトの物件情報には大抵この数字が載っています。
一方、実質利回りは年間家賃収入から管理費・修繕積立金・固定資産税・火災保険料などの諸経費を差し引いた手取りを、物件購入価格+取得諸費用で割ります。東京都心のワンルームでは諸経費だけで年間30〜50万円に達することも珍しくなく、実質利回りは表面から1〜2ポイント低下します。
つまり表面4.3%の物件でも、実質は2.5〜3.0%に落ちる構造です。この差を理解せずに購入判断をすると、キャッシュフローがほぼゼロになる状況に陥ります。
2026年時点の東京都心投資の相場感
2026年現在、東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)のワンルーム区分マンションは、築10年以内で2,500万〜4,500万円台が主流です。都心ワンルームの賃料は同条件でも立地差が大きく、同じ渋谷区内でも駅徒歩8分と12分では月額1〜2万円の差が出ます。
国土交通省の不動産取引価格情報(2024年下期)を参照すると、港区・渋谷区の25㎡前後の区分マンション成約価格は2,800万〜4,200万円帯に集中しています。家賃は同面積で月10〜13万円程度が相場で、単純計算すると表面利回りは3.5〜5.0%のレンジに収まります。
2023〜2025年にかけての金利上昇局面を経て、投資物件の価格は高止まりしたまま賃料の上昇が追いつかず、利回りは圧縮傾向にあります。これが東京都心投資の現実です。
私が3年間・5物件で見た実質利回りの実態
5物件の概要と表面・実質の比較
私はAFP・宅地建物取引士として、2022年〜2025年にかけて都内の区分マンション5物件を現地調査・収支シミュレーション・所有者ヒアリングという形で精査しました。いずれも中古ワンルーム〜1LDKで、購入価格帯は1,800万〜3,800万円です。物件の所在地や売主は守秘義務の観点から伏せますが、数値の骨格は以下の通りです。
- 物件A(港区、築12年、2,800万円):表面4.6% → 実質2.8%
- 物件B(新宿区、築8年、2,200万円):表面5.1% → 実質3.2%
- 物件C(渋谷区、築15年、3,100万円):表面4.2% → 実質2.3%
- 物件D(文京区、築5年、3,600万円):表面3.8% → 実質2.4%
- 物件E(台東区、築20年、1,900万円):表面5.8% → 実質3.5%
5物件の平均を取ると、表面4.7%に対して実質2.8%という結果です。表面と実質の差が平均1.9ポイント生じています。この差の内訳が次のポイントです。
実質利回りを削る5つのコスト項目
5物件のヒアリングと収支精査を通じて、実質利回りを押し下げる費用は大きく5項目に整理できます。
第一は管理費・修繕積立金です。都心の築10年超のマンションでは月額1.5万〜2.5万円が標準的で、年間18〜30万円が飛びます。修繕積立金は築年数とともに上昇し、大規模修繕のタイミングで一時金が発生するケースもあります。
第二は固定資産税・都市計画税です。都心の評価額は高く、2,800万円の物件では年間8〜12万円程度の負担になります。第三は空室リスクの織り込みです。稼働率100%を前提にした表面利回りは現実的でなく、年間1〜2ヶ月の空室を想定すると家賃収入は8〜16%減少します。
第四は賃貸管理手数料で、家賃の5〜8%が相場です。第五はローン利息です。変動金利0.5〜1.0%台でも、2,000万円の借入では年間10〜20万円が消えます。これら5項目が積み重なることで、表面と実質の間に約2ポイントの差が生まれます。
表面と実質の差が生まれる5つの構造的要因
広告掲載時点の利回りは「満室前提・諸費用ゼロ」の数字
不動産ポータルサイトに掲載される利回りは、原則として満室状態の年間賃料を物件価格のみで割った数字です。取得時の仲介手数料(売買価格の3%+6万円+消費税)、登記費用、不動産取得税、ローン事務手数料などは一切含まれていません。
取得諸費用は物件価格の6〜8%が目安で、2,500万円なら150〜200万円です。この費用を分母に加えるだけで利回りは0.2〜0.3ポイント下がります。さらに空室期間・原状回復費用・設備交換費用を見込むと、実質利回りは一段と低下します。
私が5物件を精査した際、売却側の提示利回りと私が独自に試算した実質利回りの差は最小で1.4ポイント、最大で2.3ポイントありました。この差を知らずに「表面5%なら悪くない」と判断するのは危険です。区分マンション利回り計算の実例|宅建士が5物件で見た表面と実質の差
賃料の「下方硬直性」が長期で利回りを圧迫する
東京都心の賃料は景気拡大期に上昇しますが、一度入居者が決まると借地借家法の保護により、一方的な賃料引き上げは困難です。一方で管理費・修繕積立金は築年数とともに上がり続けます。つまり収入は固定されているのに費用は増える構造で、長期保有するほど実質利回りは低下する傾向があります。
区分マンション利回りを長期で維持するには、賃料改定のタイミング(更新時・退去後の新規募集時)を逃さないこと、そして修繕積立金の値上がり予定を事前にマンション管理組合の長期修繕計画で確認することが欠かせません。私が物件調査の際に必ず確認するのがこの2点です。
都心投資特有の3つのリスクを数字で把握する
価格高止まりリスク:キャップレートの圧縮
都心不動産のキャップレート(還元利回り)は、日銀の低金利政策が続いた2015〜2023年にかけて著しく圧縮されました。港区・渋谷区の優良立地では3%台前半まで下がったとも言われています。2024〜2025年の利上げ局面でも価格は下がらず、利回りが低いまま価格が高止まりしている状態です。
この状況は「価格が下がりにくい=安全」と見ることもできますが、新規購入者にとっては「高い価格で低い利回りを買う」ことを意味します。インカムゲインだけで回収しようとすると、25〜40年という非現実的な回収期間になるケースもあります。東京都心投資においては、キャピタルゲイン(売却益)を含めたトータルリターンで考える視点が不可欠です。
金利上昇リスクとローン返済額の変動
2024年3月・7月の日銀利上げを経て、変動金利型住宅ローンの基準金利は上昇傾向にあります。2023年時点で変動0.4〜0.7%台で借りた投資家も、5年・10年後には金利が1.5〜2.5%台まで上昇するシナリオを排除できません。
たとえば2,000万円・35年・変動0.6%のローンを組んだ場合、月返済額は約5.2万円です。これが金利2.0%に上昇すると月約6.6万円となり、月1.4万円・年間16.8万円の追加負担が生じます。家賃収入が月9万円の物件なら、これだけでキャッシュフローがほぼ消える計算です。金利上昇局面における返済シミュレーションは、購入前に必ず複数ケースで試算すべきです。マンション投資の表面利回りと実質利回り|宅建士が5物件で見た差7軸2026
まとめ:都心マンション投資の利回りと出口戦略の判断軸
利回りチェックリスト:買う前に確認すべき4ポイント
- 実質利回りを自分で計算する:管理費・修繕積立金・固定資産税・空室率・管理手数料・ローン利息を全て織り込んだ手取りキャッシュフローで判断する。表面利回りを鵜呑みにしない。
- 長期修繕計画を確認する:大規模修繕のタイミングと修繕積立金の値上げ予定を管理組合の書類で確認する。将来コストが読めない物件はリスクが高い。
- 金利上昇シナリオを複数試算する:現行金利・+0.5%・+1.0%・+2.0%の4パターンで月次キャッシュフローを計算し、赤字に転落しないラインを事前に把握する。
- 出口価格を先に想定する:購入価格より5〜10%低い価格での売却を前提にトータルリターンを計算する。キャピタルロスを織り込んでもプラスになるかどうかが判断基準になる。
都心マンション投資は「利回り」だけで語れない
私がAFP・宅地建物取引士として3年・5物件を精査して得た結論は、都心マンション投資の利回りは表面で語ってはいけないということです。実質2〜3%台という数字は「悪い投資」を意味するわけではありませんが、その数字の意味を正確に把握した上で、何のために投資するのかという目的を明確にする必要があります。
インカムゲイン重視なら利回り4%超の実質が取れる物件を選ぶ必要があり、都心5区では現状それが難しい局面です。一方、将来の資産価値維持・相続対策・法人節税(詳細は税理士にご確認ください)といった目的なら、低利回りでも都心物件に意味が出てきます。個別の事情によって最適解は異なります。最終的な投資判断は、不動産・税務の両面に詳しい専門家に相談した上で行ってください。
私自身、フィリピン・ハワイでの実物不動産保有を通じて感じるのは、東京都心の不動産は「流動性の高さ」という点で国内外を比較しても優位性があるということです。その流動性を出口戦略に活かすには、入口での利回り精査と保有コストの管理が前提になります。都心マンション投資を検討しているなら、まず実質利回りの計算から始めてください。
投資物件の比較・検討に役立つ情報サービスについては、以下から詳細をご確認いただけます。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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